俺様ドクターに捕獲されました


だいたい、彼にそんなこと言われる筋合いある? 彼氏でもなんでもないくせに。


「私、ものじゃないもん……」


密かに胸に抱え続けていた不満がポツリと口から漏れた。


もう、ずいぶん前から、“彼のもの”として扱われることが苦しくなった。そう言われることが、嫌でたまらなかった。


なのに、彼に縛られることを喜んでいる自分もいる。相反するその気持ちが、私を長年苦しめていた。


「……仕事、しなきゃ」


乱れてしまった髪と心を整えて、次のケアに向かう。


トントンとドアをノックをして病室に入ると、ひまわりのような笑顔が私を迎えてくれた。それにほっとしながら、ベッドサイドに近づいていく。


「こんにちは、柴田さん。少し遅くなってしまってすみません」


営業スマイルを作って無理やり微笑んだ私を見て、おばちゃんは心配そうな顔をした。


「いいのよ、そんなこと。……どうしたの? 優ちゃんにいじめられた?」


「え!?」


いじめられた……とは少し違うが、そんなに顔に出ているのかと頬に手をあてる私に、柴田のおばちゃんは微笑んだ。


「わかるわよ、私には。ずっと里衣子ちゃんのこと見てたもの。里衣子ちゃんが、そんな顔しているときはね、だいたい優くんのせい。この間は、もう大人だなんて言ってたけど、本当に仕方のない子ね」


呆れたように笑うおばちゃんに驚きながら、マッサージオイルをブレンドしていく。


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