俺様ドクターに捕獲されました
「優くんにも里衣子ちゃんにも、嫌な役目をお願いして申し訳ないと思うわ。でも、きっと優くんは里衣子ちゃんが思うほど強くないから。隣で優くんを支えてあげてほしいの。それができるのは、里衣子ちゃんだけなのよ」
おばちゃんの言葉に、私はうなずくことができなかった。
私なんかにあの人が支えられるとは思えないし、それを必要としているわけがない。
お願い、と私を見つめるおばちゃんに曖昧に笑ってごまかして、逃げるように病室を出る。
使ったタオルを抱えて歩いていると、窓の外に医局に向かって歩いて行く彼の姿が見えた。
その隣には、やはりあの女医さんがいる。ふたりの姿を夕日が照らして……。
飛び込んできたその光景から、慌てて目を逸らした。タオルを抱え直して、小走りにその場所を離れる。
ほらね、やっぱりあの人は私のことなんて必要としていないじゃない。
彼が私をそばに置くのは、私が幼なじみだから。たまたま彼の親友の妹として生まれたから。ただ、それだけ。
それを私が勘違いしていただけ。彼の隣は、私だけのものではなかったのに。
そんなことは思い知っているはずなのに、どうしてこんなに傷ついているのだろう。
もう、こういうのは嫌だったのに。こんな気持ち、二度と味わいたくなかった。
だからあのとき、彼から逃げ出すことを選んだ。好きだったから。ずっと、好きだったから……。