禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~【試し読み版】
森は見ていた。
深碧の葉が重なり合って濃い陰を落とす緑苔に覆われた広場。
所々に射し込む天からの光の筋が、まるでふたりを照らし出すように降り注いでいる。
「……に……にいさま……」
「兄様じゃない。ルークと呼べ」
森閑とした空間、草木の息吹の中で、男女の震える声だけが響いていた。
否――。男女、と呼ぶにはあまりにも似つかわしくない。
夜の闇を凝縮させたような深い黒の髪を持つのは、まだあどけなさの残る少年。そして、光の滝のような黄金の髪を儚げに揺らすのは、少女とさえ呼ぶのが憚られるような幼い娘だった。
「……にい、さま……」
「違う。……ルークと……ルークと呼ぶんだ、ヘレン」
荒い吐息混じりの声で、少年は少女にそう命じる。彼女の小さな薄紅色の唇に、何度も口づけながら。