禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~【試し読み版】
少女はきつく目を閉じ体を強張らせていたが、拒絶はしなかった。
少年の、何度も押しつけてくる唇を、痛いほど強く抱きしめる腕を、健気に睫毛を震わせながら受け入れている。
「……ヘレン……ヘレン……」
黒橡の瞳を切なそうにゆがませた少年が苦しそうに名を呼ぶと、少女は固く閉じていた目を開き、おずおずと薄紅色の唇を開いてささやいた。
「……ルーク……」
それを聞いた少年は瞳を見開き、驚きの表情を浮かべると、次第に幼子のような泣き顔へと変わっていく。
「……ヘレン……。……俺は……」
ボロボロと涙を零し少女の体から離れると、少年は勢いよく踵を返し苔むす森の道を走って行ってしまった。
深翠の広場には、ひとり夢を見ているような色を浮かべた瞳の少女が残された。
森は見ていた。
幼い兄妹の禁じられた恋慕を。