空高く、舞い上がれっ。
1st Year
夢じゃなかった
初めて彼を見たのは高一の夏だった。
その日は甲子園に繋がる『全国高等学校野球選手権地方大会』で、わたしは全校応援に強制参加させられていた。
生徒会から手渡された麦わら帽子には赤いリボンが巻いてある。
日差しは熱く、眩しくて目を細めた。
野球のルールって何?
一塁ってドコ?
野球に対してそんな程度の認識のわたしには、延長戦に入ったゲームは億劫だった。
隣にいる多村 寧音(タムラ ネネ)は高校野球が大好きで真剣に見ている。
早く終わらないかなぁ……
『かっとばせー!藤嶋ッ‼藤嶋ッ‼』
野球応援定番の声援コールが始まった。
寧音の情報によると、今バッターボックスに入ったのは同じ学年の子らしい。
藤嶋 輝空(フジシマ ソラ)
こんなピンチに一年生が出るなんて……
きっとプレッシャー負けするんだろうなぁ。
わたしは早くも試合終了を想定して、麦わら帽子で風を仰ぐ。
吹奏楽の音。
祈るようなかたちで見守るマネージャー。
必死でエールを送るベンチ入り出来なかった部員。
回ってきた麦茶を飲もうとしたわたし。
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