空高く、舞い上がれっ。
教科書を棒読みする輝空くん。
席につくと、わたしの方を向いて
「お前のせいで怒られたじゃん!慰謝料」と、右手を出し小声で話しかける。

わたしはポケットからガムを出し、その右手に一粒置く。まぁ、あと一個くれたら許してやるよ。と要求するので消しゴムのかけらを投げつけておいた。

そのやり取りを見てまた先生に怒鳴られる……そんなくり返し。
正直、授業は半分も聞いていない気がするが、わたしにとって幸せな時間のひとつだ。



***


「歩舞、最近輝空くんと絶好調だよね」

日本史のあとの体育の授業。
通常だったら体力測定をする時間なのに

『今日は先生が一人いないので自由!』
……なんだそうで、毎回わたしと寧音は体育倉庫にある緑のマットの上で井戸端会議。

「なんで?」

「だって~幸せ続きじゃん‼憧れの球児と同じクラスになって、選択授業じゃ隣の席だし♪いつかバチあたるね、絶対‼」
< 100 / 268 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop