空高く、舞い上がれっ。
「え?ないよ」
輝空の答えはあまりにも即答だったからあたしの期待も、「つまらーん」の一言で終わってしまった。
二人乗りブランコに乗り込んでそっぽを向くと、後から隣に座りわたしの肩に腕を乗せて、なんだよ~。と、笑う輝空。
なんだ、嫉妬をしてしまうのはわたしだけか……
「だって、妬くときないじゃん」
まぁ、そうですが。
尊みたいな激しい束縛は嫌だけど、ちょっとでいいから妬いて欲しかったのに……
「あ、もう少ししたら俺、一週間くらい合宿入るから」
「へ!?学校は?」
「ん、合宿っつっても、学校に泊まりだからさ」
なんだ。
わたしは胸をなでおろす。
「びっくりしたなぁ。じゃあ、別に会えるんじゃん」
「先に言っとくけどさ、学校じゃ会えるけど今みたいには会えないから」
へぇ~…………え!?
「え‼そんなッやだやだッ‼」
「しょーがないだろ?だって……」
両手で、輝空の左腕を揺する。
笑っていた輝空の顔がスッ、と真剣になったのがわかった。
“だって、夏の大会が近いんだからさ”
──ザァ ザァ――……
木々の揺れる声、半月が昇る夜空。
隣にいる輝空は先を見つめる球児の顔だ。
少しだけ鼓動が強くなる。
「そっか……もう、そんな時期なんだね。なんだか、わたしも緊張してくるかも……寂しいけど一週間だし、がんばってね」
その言葉にパッと振り向いて「ごめんな」と言った輝空は、いつもの輝空だ。
「歩舞も、もうそろそろ本格的に学園祭の準備だろ?」
頑張れよ、委員長サン。
あぁ、この声好き。さりげなく握られた右手に感じる感触も。
「ねぇ、輝空?」
わたし、ホタルが見たい。