空高く、舞い上がれっ。
「ホームルームの前に配っておけよ」
閉会式の後、堀田ちゃんーがわたしを呼び止めて職員室で何かが入った袋を両手いっぱい手渡された。
教室のドアを足で開け中へ入るわたしを、だらだらと休むクラスメイト達が注目する。教卓の上にそれを置き、中身を広げた。
「はーい、選んでー」
袋の中身は冷たい、冷たいバニラのアイス、イチゴのかき氷、色とりどりのキャンディーアイス……
堀田ちゃんの差し入れにみんなが一斉にかけ寄る中、廊下側の端の方にいる輝空。目が合うとバニラと、口だけわたしに向けて動かした。
「はい」
左手には握りしめたイチゴのかき氷。
右の手に持ってきたアイスを渡すと、ありがと。と、無邪気な顔で喜んでくれた。
窓側の輝空の机。その床にふたりで座り、アイスの食べ比べをした。
手が触れている場所から溶けてゆくアイスの甘さ。扇風機のまわす風。
上履きに描いたいたずら書きも、すべて確かな現実。
……だった、はずなのに。
ずっと、夢を見ていたかのよう……だと、そんな気が起こるのは今に始まったことでもないけれど……
その日の夜。
【距離を置きたい】
突然、前触れもなくそう送られてきたメールが、わたしを暗く深い夢の世界へ落としていったんだ。