空高く、舞い上がれっ。
体育館と校舎を繋ぐまぶしい渡り廊下。
目がだいぶ慣れてきて、また悲しくなるんだ。

鮮明に見える遠くの山の緑も、どこまでも伸びる入道雲も、その雲を運ぶ風も。楽しそうに今日を生きるまわりの人たちも──……
いつもと同じだからわたしを悲しくさせるんだ。

明日、わたしが泣いていてもこの風景は変わらずにここにあるんだ。
明後日、わたしが笑わなくなってもこの自然はなにも変わらずにここにあるんだ。
1年先も30年先も……
わたしが死んだとしてもこの世界は何も変わらず動き続けるんだ。

そう思うと、息が詰まって生きていることに意味を見出せなくなりそうになる。


誰もいない教室は風の通り道。
妨げられるものがいないから教室の窓からドアへ、ドアから廊下の窓へと抜けていくんだ。

冷たい床、頭の上で揺れるカーテン。
壁に妨げられながらも聞こえてくる聞き覚えのある音楽。
目を閉じればあの笑顔を思い返してしまうから、スマホは恐くて見れない。
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