空高く、舞い上がれっ。
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「あ~ぁ、おいしいとこもってくよなぁ、藤嶋は」


廊下に置いてある冷水機の前にいたわたしと寧音と咲にも聞こえるように、坊主頭の二人組みは大きな声でニヤニヤと会話をしていた。

わざとらしさを感じたのは、わたしが輝空の彼女だと野球部に知られているから。
そして、わたしと輝空が距離を置いているということを、きっとまだその二人は知らないから。



野球部が帰って来たのは、体育館での後夜祭が始まるほんの少し前。

教室に戻ったわたしは、後ろの黒板のあたりにたまっている男子の集団の中からすぐに輝空の姿を見つけだした。
輝空をさりげなく見つめていたが目が合うことはなかった。



後夜祭の前にあるホームルームが始まる前に、わたしは教室を抜け出し職員室へ向かった。

職員室の印刷室に置かれた大きな冷蔵庫から、屋台で買って冷凍庫で冷やしてあったオレンジシャーベットを取り出す。


学園祭の屋台を彼氏と手を繋いで回ること、それがわたしの夢だった。


『屋台のもの、何か買っておいてあげるね』

そう言うと、そんなの気にしなくていいから。と、輝空が笑ったのはいつのことだっただろう……

あの時には、もうわたしと距離を置きたいと思っていたのかな。
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