空高く、舞い上がれっ。
***

わたしの席から見える空は、どこまでも続く青とまぶしいくらいの白。昼の授業は眠たくて英語の音は子守唄。
寧音の背中も眠たそうだ。


学園祭のあの時以来、輝空と言葉を交わしていない。
わたしの席から見える輝空の後ろ姿。その姿を捉える度に泣いてしまうわたしはいつの間にかいなくなった。

涙が枯れるまで泣いてしまったから。
人間は、涙を流すことでストレスを体の外へ出すらしい。
でも、今のわたしは泣きたくても涙が流れない。水分を出し切るとこんな風になってしまうのか、と雲を見つめて苦しくなった。

勉強、剣道──何も手に付かない。

今までのメールは常に長文で、相手が「バイバイ」を言うまで返信を返し続けなければ気がすまなかったわたしはもういない。
メールが恐い。輝空のメールを最後に、スマホを持つことをやめていた。


大好きだった輝空の隣で受ける日本史の授業も億劫に感じてしまう。
いつもなら、席に着いたらすぐに話しかけてくれていたのに。いつもなら、ガムちょうだいって、手を差し出してくるのに。いつもなら、笑ってわたしの名前を呼んでくれるのに……
振り向いてもくれない。
わたしからはもう、話しかけれない。
< 208 / 268 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop