空高く、舞い上がれっ。
わたしと輝空が話さないでいると、授業はやけに静かに進んでいった。いつもは怒鳴ってわたしたちを呼ぶ日本史教師の銀ちゃんも、

「今日は静かだから授業がはかどるなぁ」

と、わたしたちの変わりように逆にソワソワしている様子。

日本史の授業は、わたしと輝空は飽きもせずおしゃべりをして、その度に銀ちゃんに怒られて教科書を読まされていた。苦い顔をしつつも笑っていたあの時の二人に戻りたい。

わたしは返却された期末テストの解答用紙に目を通して、教科書の間にはさみ閉まった。
何点だった?その一言すら言えない自分が悔しい。

輝空の気持ちを教えてよ……。眠る姿に言葉を投げかける。

スローペースなモノクロの世界はわたしには苦しいけど、輝空の足に付いた三色の色がまだそこに見えることがせめてもの救い。


野球部の二試合目は全校応援だったけど、剣道の試合と重なって応援には行けなかった。
その後の試合も遠征で……

輝空の頑張りを知ることができるものはテレビの中だけ。
ベスト8の手前。野球部の夏は終ってしまったのだ。
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