空高く、舞い上がれっ。

一学期の終業日。体育館で校長先生の長々しい話を聞いているふりをして、前の方に並んでいる坊主頭を見つめていた。

「今日、頑張れる?」

先生にばれないように小さくわたしに話しかける寧音に、うん。と返事をしてひたすら前を見つめた。





「一年後にはお前らも受験生なんだから、まだ早いとか思ってないで大学のこととかも夏休みの間に考えておけよー」

休み前の最後のホームルームで、教卓に立つ堀田ちゃん。真面目な顔をして話す姿を見るのは久しぶりだと思った。

一年後、わたしはどうなっているのだろう……笑っているのかな、輝空の隣で。

幸せの確率を表す方程式を黒板に書いてください。そう言ったら、数学が得意な君はどう答えを出してくれますか?


重たい荷物を下げ教室を出る。
あの姿を探して、混雑する教室の前の廊下を人をよけて進み、自動販売機や職員室を覗いた。

さんざん歩き回って、普通科と商業系クラスを繋ぐ中央廊下に掲示物を見る輝空の姿を見つけた。手はズボンのポケットの中に入れている。
恐る恐る近寄ると、それに気づきこちらを向く。無言の空間に足が止まってしまった。


「これ……」

「……え?」

輝空はそんなわたしを見て掲示されていた写真を指差す。輝空の隣まで行き、それを見た。

夏の大会の写真……

「約束、だめだったな」

約束…………、あ……
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