空高く、舞い上がれっ。
野球部はA軍とB軍に分けられていて、学年関係なく下克上制で分けられるらしい。
今の時期は上級組のA軍には経験をつんでいる先輩が占めている……
だけど夏の大会前から監督からA軍入りを勧められ、そしてB軍ながらにユニフォームをもらいベンチ入りを許されたらしい。
そしてあのホームランを打った──……

黙って輝空くんの話を聞いていたわたしは、あのホームランを思い出していた。
一年の輝空くんがA軍にあがるという事はすごい事なんじゃないの?
それって喜ぶ話なんじゃないのかな……?

「どうしてそれなのに──……」

それなのに野球をやめたいの?

輝空くんはわたしの目を見て話す。

「……俺がA軍へ上がったら、鶴見先輩がB軍へ下がらなきゃいけない」

輝空くんが目線を反らす。
雨はやむ気配を見せずに降り続く。

「鶴見先輩?」

「夏大会の時に俺がベンチ入りした代わりに外された先輩。ほんといい先輩なんだ」

けど──……
言葉を一瞬つまらせる輝空くん。
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