空高く、舞い上がれっ。


「じゃあ、またね」

「ん、また明日な‼」

雨で濡れた頭をクシャ、となでてくれた輝空くん。

「びしょぬれじゃん」

「輝空くんもネ」

輝空くんはさっきまで引いていた自転車に乗りペダルをこぐ。


「――……輝空くん‼」

無意識に名前を呼ぶと、少し前にいる輝空くんは自転車を止めて振り替えった。
わたしは輝空くんのもとへ走って近寄る。

「どうした?」

「……もっと自分の事を考えていいんだよ」

少し乱れた呼吸を正して言葉を出すと、何も言わず黙って聞いている輝空くん。

「輝空くんは優しいから、誰かが傷つく事が嫌なんだよね。でも……何のために高校で野球をしてるの?先輩のためなの?
そうじゃないよね。自分の時間をムダに使っちゃだめだよ。わたし、輝空くんには止まって欲しくない」

中学の時に剣道部に入っていたわたしも、同じ立場に立った事がある。関東大会出場をかけた大事な試合で、わたしは先輩と交替する事になった。
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