空高く、舞い上がれっ。
ちょっと恥ずかしがりながら答えた莉華。
みんなはキャーキャーしながら『そうなんだー‼応援するね』というような言葉を莉華に向ける。わたしも同じように『頑張ってね』と、笑顔で応援の言葉を向けた。

笑顔であふれた部屋で、わたしの心の中だけは沈んでいた。落ち込むより先に、真っ白な世界にひとりで立っているような感覚がわたしを襲う。

『藤嶋輝空くんが好きなのー♪』

ポツリ。動揺がじわじわとわたしの体を小刻みに震わせた。



***

友達に好きな人がいたらわたしはその子を応援したい。でも、その子の好きな人が自分の好きな人だったら……どうしたらいいんだろう……

スキー教室の2日目はなんだか頭の中がぼんやりしていた。ただスキーですべって、寧音としゃべってお昼はクラスごとに食べて……

そうだ。
そういえばお昼の時、わたしの座った席からは尊たちと笑いながら大盛りのカレーを食べる輝空くんが見えた。
ピカチャンちょー可愛いッ♪と、隣に座っていた莉華がわたしの肩を揺すって……チクチクと、胸が痛んだ。

言いたかった、わたしも輝空くんが好きなんだ、って……でも莉華に嫌われたくないから……


「歩舞具合悪いの~?元気ないね」

「ん?そんなことないよー?」

……だから、心の隅に置いておく事にした。
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