空高く、舞い上がれっ。
責任はあの日、好きな人は輝空くんだとカミングアウト出来なかったわたしにある。

「……ごめん」

「なにが?謝られても意味わかんなくてムカつくんだけど。そんなにあたしが男といると嫌なの!?」

まるで燃え盛る炎のよう。
もう今更、莉華になにを言っても醜い言い訳でしかない。それでも言わなくてはならない言葉がひとつ──……

「あたしもう帰るわ。マジ、ここまで最低だとは思わなかった」

荒々しく椅子を机の下に戻す。
教室を出る時、一度わたしに振り向いてバシンッ、とドアを締め出ていった。

廊下の冷たい足音が少しづつ遠ざっていく。軽蔑のまなざしが残って、痛い……
もう手遅れ。わたしと莉華はこれから先、関わることを拒絶する仲になる──

「……そんな未来は、まっぴらだよ‼」

脳から指示をする前に体が動いているような錯覚。気づけばわたしは走っていた。
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