空高く、舞い上がれっ。
廊下を走り階段を下る。
少し薄暗い玄関で莉華に追いついた。

「莉華、待って‼」

はぁ、はぁ‥…ゴホッ。
荒い息を無理矢理こらえようとしてのどがむせる。
かかとが踏み崩された黒いローファー。
莉華は靴を履こうとしていた途中だった。

「今、わたしが何を言っても莉華にはただの言い訳に聞こえると思う……」

莉華は何も言わずわたしを細い目で見つめる。

「でも‥…」

「でも?」

莉華の切り返しは早かった。唾をのむ。

「わたしもずっと輝空くんが好きだった」

一瞬、莉華が驚いた顔をしてすぐ冷めた目に戻る。

「……そんなこと言ってさ、あたしがピカチャン好きって言ったからでしょ!?
歩舞、スキー教室の時ピカチャンが好きだなんて一言も言わなかったじゃん‼
ピカチャンと仲良くなってあたしに見せつけたかったんじゃない!?笑って楽しんでたくせに‼よくそんなこと言えるねッ」

一言、一言。グサッと胸に突き刺さる。
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