空高く、舞い上がれっ。


次の日、学校の下駄箱で莉華と一緒になった。
目が合ったが挨拶はない。早歩きで行ってしまった莉華。
しかたないか……

自分の番号の下駄箱に形の整ったローファーを入れて、かわりにどことなく古びてきた上履きを手に持った。少し時間をかけてそれを履く。

購買のあたりで、お弁当の注文用紙に記入をしている黒いエナメルのバッグを肩からさげた集団が見える。その中にいる一人を無意識に探してしまう。その人は仲間と戯れて笑っていた。


そういえば、最近しゃべってなかったなぁ……
毎日の学校、友達の輪、部活。
最近、わたしはいつ笑った?

重たい──適当に生きたい──眠ってしまいたい──
永遠に覚めない眠りについてつらいこと全部。めんどくさいなぁ、の一言で片づけてしまいたい。



……あゅ……、お……て。

「起きてってば、歩ちゃん‼」

ガバッと顔を上げる。
目に見える景色、英文と数字の書かれた黒板、10時12分を指した時計の針。
そして、わたしの肩を揺する榎子の姿。
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