空高く、舞い上がれっ。
2nd Year

指切り、約束




朝のだるさ、床の冷たさ、防具と疲労の重さ。つらい、苦しい、動けない。

止めたければすぐに止められる。竹刀を振らなければすぐに楽になる。それでも諦めないのは、誰よりも強くありたいから。



早朝の稽古は中学三年の冬からの日課。
もっともっと、と剣道で上が見たくて今の高校に進路を決めた受験時代があった。
つらくても、後悔はしていない。そう感じるのは決まって稽古の後に、顔を洗う瞬間だった。


「毎朝毎朝、あんたらぁー頑張るねぇ」

太眉の事務のおじさんが花壇をいじりながら、水道から道場の中へ戻ろうとするわたし達に向かって話しかけてきた。

“おはようございます”
朝のこの響きが気持ちいい。

「こんな日にまでよくやるねぇ」

事務のおじさんは背筋を伸ばして腰をトントン叩きながらにこやかな笑顔を見せる。


こんな日……、この日は新学期の始めの日。
高校二年という新生活のスタートだ。
< 86 / 268 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop