空高く、舞い上がれっ。
「まぁまた夏大とかあるから、そん時は応援してな?」

わたしに触れる時の輝空くんはいつも優しい。そんな輝空くんに出会うたび、胸が甘く苦しくなる。

「今日ね、放課後の稽古で部内戦があるんだ」

それは最近のわたしの不安だった。
後輩が入ってきたことで、自分の配置が変わるかもしれない。

先鋒・次鋒・中堅・副将・大将……
今、わたしは先鋒だ。
もし、次鋒や副将に変更になってしまったら……。それ以前に、メンバーからはずされてしまったらと考えると後輩との試合は怖かった。

「下克上って、怖いよな」

輝空くんの言葉に頷く。

「俺も、自分が先輩になってわかった。年下ですげーヤツなんてゴロゴロいて、気ぃ抜いてたらすぐこされちまう。
今なら鶴見先輩の気持ちもわかるよ……」

上の人より、下からくる力の方が怖いよな。と、そう呟いた輝空くん。
……わたしと輝空くんは同じなんだ。

「でも、だからこそ自分に自信持たなきゃいけないんじゃん?自信もって戦えれば負けても後味いいって」

だから、頑張れよ。と言葉をかけてくれる。
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