終わらない恋歌
記憶をたどる時…
10月9日。

入籍前日。
あたしはいてはいけない場所にいた。


18歳のトキの元カレの家の前。
どぅしてかって聞かれたら、自分の口で結婚することを伝えたかった……
でも何で?って聞かれたら、自分でも答えは見つからない。

ただ自分の口から伝えたかった……
他の誰かから知られるんじゃなくて…




でも平日の昼下がり。
働き盛りの若者は当然家にいるわけもなかった。

あたしは想い出の場所に向かう。
小さな公園だ。
3年前と、何一つ、何一つ変わっていなかった。



出逢いはあたしが高2の春。野球部でマネージャーをしていたあたしの前に、入部希望の新入生がゾロゾロ歩く。短髪の中に、1人だけサラッサラのロン毛の男。白いヘアバンしちゃってサ☆
野球部命のあたしは、正直ちょっと不愉快だった。

だから言ってやったんだ。「あんた、丸刈りできんの?」って。


こっちを振り返ったその顔は今でもはっきり覚えてる。
くりっとした優しい穏やかな瞳で、ナメんなって言わんばかりの反抗的で挑発的な目であたしを見た。


ちょっと怯んだって言っても嘘はナイ。
でも、その男、ふっと笑って他の新入部員とその日は帰って行った。


その男。
名前は堀口 淳。(アツシ)
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