通学電車
「そんな見ないでよ。高瀬さん」
「わ……私の名前知ってるの?」
「知ってるよ。名前と顔は」
そう答える彼の顔が、見えない。
私の名前、知ってたんだ。
そっか。
そっかあ……。
電車は、遅れもなく乗客を乗せて進む。
地下鉄を抜けて、地上に出た最初の駅が私たちの降りる駅。
線路が地上に上がって行き、地下を抜けて窓から緑と明るい陽光が差し込んだ時、彼に掴まれたままの右手に気づく。
到着を伝える車内アナウンスが聞こえ、乗客が降りて行く。
握られた手は、外れない。
「…………あんたのこと、あんまり知らないから、知りたいって思ってる。…って、昨日言おうとしたんだけど」
「えっ……」
二人でホームに降り立ち、今度は彼の照れた顔がはっきり見えた。
「とりあえず、今日一緒に帰ろっか…」
「うん…っ」
手を繋いだまま、改札に向かって歩き出す。
地下鉄の満員電車がくれたチャンスに、感謝しながら。
「わ……私の名前知ってるの?」
「知ってるよ。名前と顔は」
そう答える彼の顔が、見えない。
私の名前、知ってたんだ。
そっか。
そっかあ……。
電車は、遅れもなく乗客を乗せて進む。
地下鉄を抜けて、地上に出た最初の駅が私たちの降りる駅。
線路が地上に上がって行き、地下を抜けて窓から緑と明るい陽光が差し込んだ時、彼に掴まれたままの右手に気づく。
到着を伝える車内アナウンスが聞こえ、乗客が降りて行く。
握られた手は、外れない。
「…………あんたのこと、あんまり知らないから、知りたいって思ってる。…って、昨日言おうとしたんだけど」
「えっ……」
二人でホームに降り立ち、今度は彼の照れた顔がはっきり見えた。
「とりあえず、今日一緒に帰ろっか…」
「うん…っ」
手を繋いだまま、改札に向かって歩き出す。
地下鉄の満員電車がくれたチャンスに、感謝しながら。