月の瞳を持つ少女
このピリピリとした雰囲気のせいか、
いつもは落ち着くはずのソファの端が、なんだか居心地が悪く感じる
そんな私の顔を横に座っている立美が覗き込む
「……月、どうかした?」
「……姫、と、蒼と翠は……追いかけなくていいの?」
私のそんなポツリとこぼした言葉に応えるのは立美ではなく翔馬
「チッ、双子はどうかしらねぇが、あの女はほっとけ!胸糞悪ぃ」
「翔ちゃん!!そんなこと言わないの!!姫、泣いてたよ!
謝りに行こうよ……」
「あ?絶対行かない。
あの女は我が物顔で月華に居座りやがって、あいつの兄貴が広海ヒロウミさんじゃなきゃこんな所に置いとく理由はねぇのによ。
あいつ、他のバカ女どもになんて言ってっか知ってるか?
『月華は姫のものなのよ。誰も近づかないでー』
……ばかじゃねーの?」
「……翔ちゃん」
詩乃はスクっと立ち上がる
「翔ちゃんが行かないなら、私ひとりでいく」
「はあ?なんで?」
「私は、みんなよりも姫といる時間が長いの。
姫はあんなこと言ってるけど、ただ……」