月の瞳を持つ少女






「おい、名前、なんて言うんだ?」





そう聞くと、彼女は困ったような顔をする





「…………。」







彼女は少し考えると、ハッとしたように顔を俺に近づけた









「目」







「め?」








「私の目は私だけのもの。」






??









どういう意味だ?










考えていると、遠くの方に黒塗りの車が見えた







月の瞳がその車をとらえる







「…………迎えだ」








そう言うと彼女は走り去ってしまった








「あぁ!おい!」







必死に手を伸ばしても振り向いてさえくれなかった








俺は彼女と別れてから、彼女の言っていた言葉の意味を知ることとなる








彼女の瞳を、俺は忘れない……







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