初恋ホームラン
そして、何人目かの人を掻き分けると、ふわっと突然、視界が開けた。
通路に、出たんだと思う。
外野の真ん中近く(今なら、そこがセンターだってわかる)辺りに出て、試合がバッと開けて見えた。
どこに誰がいて、何をしているのか、全部、平等に見えて、野球のルールも知らない私だけど、なんとなく楽しかった。
「わぁ……」
「な? いいとこだろ?」
こくん、と頷くと、さっきまで不機嫌そうだったその子は、満足そうに頷き返した。
……この人、結構いい人なのかも。
そう思って、男の子の横顔を見詰めていると、
「……試合見ろよ、せっかく連れてきてやったのに」
と、また不機嫌そうな声に戻ったから、私は慌ててグラウンドに視線を注いだ。