彼は高嶺のヤンキー様4(元ヤン)
「だからと言って瑞希君、怪我人に手を上げるのはやめたまえ。」
「あ、すんません、先生。つい・・・」
そう言って声をかけてくれたのは、負傷した私の手に触れている人物。
その人の言葉に、バツが悪そうに瑞希お兄ちゃんが謝るが、相手は諭すように言った。
「謝るのは私じゃない。静かにしてくれないと、診察もできない。」
「う・・・それもそうですね・・・」
「大丈夫かね、蓮君?」
「あ、はい!大丈夫です・・・」
私を『蓮』と呼ぶ声に、素直に従う瑞希お兄ちゃん。
それで場の空気が変わり、プリプリしていた瑞希お兄ちゃんの表情も変わった。
「あの、シゲ先生・・・・凛はどうです?」
チラッと私を見た後で、瑞希お兄ちゃんは声の主に向かって聞く。
「凛の右手、どうですか、シゲ先生。」
「そうだね。」
私の手首に包帯を巻きながら、ご老体がうなずく。
傷を見てくれていたのは、前回、おぼれた(?)時に応急処置をしてくれたご高齢の先生だった。
怪我した私のために、瑞希お兄ちゃん達が無理して呼んでくれたのだ。
そう聞いていたので、私からもお詫びの言葉を述べた。
「本当にすみません、シゲ先生。こんな時間に、往診に来て頂いて。」
「まったくだぞ、凛道。先生のご迷惑と、迎えに行った俺への被害を忘れるな。」
「す、すみません!」
「いいよ、伊織君。瑞希君もみんなも、蓮君をあまりいじめちゃいけない。」
メガネのレンズ越しに、ご老人は目を細めながら言う。
「この子は僕の患者さんでもあるからね。」
「せ、先生・・・・!」
優しい言葉にジーンとくる。
「口出しをする気はないけど、負けたとか、私への迷惑だとか、女性関係とか、あまり蓮君を責めないでおくれ。瑞希君、伊織君。」
「す、すんません。」
「・・・善処します。」
「モニカちゃんに、烈司君、皇助君もだよ?蓮君も気にしてあげようね。」
「あん、もちろんよぉ~!おじいちゃま!」
「凛たんは、大事にしてますって。」
「わはははは!じーさんが言うならしょうがねぇな!!」
(す、素直に聞いた!?)
個性バラバラな5人が、目上とはいえ、人の言うことを聞いた。
(このおじいさんも・・・・ただ者じゃないかも・・・!)
〔★大物の予感がする★〕