彼は高嶺のヤンキー様4(元ヤン)
「側にいたのに、助けてあげられなくて、私・・・・!」
「・・・落ち着けよ、小林。」
「だって、高千穂さん・・・・!」
「凛はこれぐれーじゃ死ぬかよ!今だって普通に話してるし・・・そうっすよね、シゲ先生!?」
「うんうん、応急処置はしたからね。」
親切に取り乱してくれるみんなに、カンナさんの問いかけに、変わらぬ口調でシゲ先生は言った。
「伊織君から怪我の経緯を聞いていたから、それらしい薬、持ってきてるからね。はい。」
「あ・・・これですか?」
そう言って、ぶ厚い処方箋袋を渡される。
「毎食後、飲んでごらん。一か月分出してるけど、3日ごとに様子を教えてね。」
「あ、ありがとうございます・・・!」
「それで凛道は治るのかよ?」
「円城寺君?」
それまで静かにしていた円城寺君が口を開く。
「本当に治るのかよ?どういう毒かわかってるのか?適当な薬、出してんじゃないんだろうな?」
ご老体をニラみながら聞く。
「え、円城寺君!?」
「大河、シゲ先生に失礼だぞ!?」
「お言葉ですが瑞希先輩、いくら瑞希先輩が信用してるからって言っても、『応急処置』って返事だけされてもなぁ・・・納得できないもんがありますよ?」
「ウェイウェイウェイ!それ俺もそう思った系―♪」
「ちーちゃん!?」
カウンター席で、ノートパソコンをずっと叩いていた友達が言った。
初めてしゃべった。
「俺、リンリンが好きで、こっちに転校した系だから~香典用意して、喪服のお別れとかキツイっしょー?」
「僕まだ、死んでませんよ!?」
「にゃはははは!だぁ~から♪」
ターン!と、Enterキーらしいぼたんをひと押しすると、ちーちゃんは言った。
「俺のリンリンが死んじゃったら、おじいちゃん先生殺しちゃうかも・・・・♪」
「ち、ちーちゃん・・・!?」
そう語る顔は、全国最強の半グレJAGUARを率いていた時の表情。
殺気までただよわせ、瞳孔全開の笑顔で、シゲ先生をにらんでいた。