彼は高嶺のヤンキー様4(元ヤン)
「いろいろ楽しかったよ、凛道蓮君。勉強にもなったしさ~」
「ま、待ちなさい!」
「ポケット。」
「え?」
無駄だとわかりつつも制止を呼びかければ、指さされながら言われた。
「ジャケットの右ポケット。」
「え?右の・・・ジャケットの、え?」
言われて左手で探れば、右ポケットに違和感を覚える。
「解毒剤、入れてあるから。」
「「「「「「「え!?」」」」」」」
言われて取り出してみれば、和紙で包まれた丸い塊が出てきた。
潮風に乗って、漢方薬独特のにおいがした。
「ど、どういうことです!?」
「別に~?片腕生活が大変だと思ったからあげるよ。」
「誰のせいでそうなったと思ってるんですか!?」
「あはははは!それもそーだね。しっかし・・・・片腕一本であの腕前・・・・大したものだよ。」
ハンドルの上に両腕をつきながら軒猿はつぶやく。
「せっかくなら、君とは完全体でやりたくなったからね・・・・」
「か、完全体って・・・・!?」
「それじゃあ、ま~た~ねぇー♪」
ギュドルルルルルルルーン!!
「あ―――――――――――!?ちょっと!?」
「逃げやがった・・・・!」
陽気な声で言うと、水しぶきを上げながらジェットスキーで行ってしまった。
「俺らが乗ってきたジェットスキーが・・・」
「つーか、皇助が乗ってきた物だったな。」
「ああ、皇助に貸した物だ。」
あーあという顔で言う瑞希お兄ちゃんと烈司さん。
烈司さんの言葉に、みけんにしわを寄せた獅子島さんが百鬼さんをにらむ。
「な!?なんだよ、テメーら!!それだとまるで、俺が奪われたみたいなもんじゃねぇか!?」
「実際、奪われたではないか、馬鹿者!爆発音をキャッチして、水上警察も迫ってきてるというのを・・・!」
「れーちゃんの感だとどう?」
「ん~このまま、ジェットスキーで逃げた方が良いな。一台盗られて、逃走時間が長くなったわけだし・・・」
「え?船内の敵を、あのままにしていて大丈夫なんですか!?」
「明日になりゃ、わかるだろう。」
「瑞希お兄ちゃん!?」
言ったのは、私をお姫様だっこしてくれている好きな人。