彼は高嶺のヤンキー様4(元ヤン)
「じゃあ、私はこれで帰るとしようか。」
「あ、お送りします、シゲ先生。」
すかさず獅子島さんが対応するが―――
「大丈夫、1人で帰れるよ伊織君。」
やわらかい口調でご老体はこれを断る。
「そんな・・・せめて、朝食を召し上がってください。」
それでも獅子島さんはあきらめない。
普段の獅子島さんからは考えられない態度。
食い下がるメガネの先輩にシゲ先生は・・・・
「ありがとう。でもね、朝一の患者さんが待っているんだよ。タクシーの中で食べるよ。」
「では、タクシー券をお渡しー」
「いらないよ。もっと大人に甘えなさい。」
紳士にふさわしい笑みで言うと、ゆっくりした動作で出て行くご老体。
「じゃあみんな、やんちゃもほどほどに。」
「「「「「ありがとうございました、シゲ先生!」」」」」
「本当にありがとうございました!さようなら、シゲ先生!」
「まいど、おおきに!さいなら~」
「はい、さようなら。」
引き戸がゆっくりと開いて静かに閉まる。
そんな先生を見ながら思う。
(・・・あの人、なに者なんだろう?)
瑞希お兄ちゃん達はともかく、あの獅子島さんがあんなに気を遣ってる。
「凛、凛!ホンマなにもんやねん、あのおじいちゃん先生!?獅子島はんが、猫かぶっとるで!?」
「さぁ・・・僕もよく知らなくて・・・」
同じ疑問を感じたらしいヤマトに、小声(?)で聞かれるけど答えられない。
「わからないけど・・・信頼されてるのは間違いないよね・・・・」
「せやなぁ~」
「ところで伊織。」
コソコソ話す私達の側で、瑞希お兄ちゃんが問題の人を呼ぶ。
「どうだった?」
「・・・ああ、あれか。」
瑞希お兄ちゃんの問いに、ふーとため息をつきながら眼鏡を直す獅子島さん。