彼は高嶺のヤンキー様4(元ヤン)
「全国紙、地方紙、ネットも探ったが・・・・出てなかった。」
「!?そーかよ・・・」
途端に、瑞希お兄ちゃんの顔から笑顔が消える。
「瑞希お兄ちゃん?どうしたんですか?」
「ああ・・・・昨日の件が、ニュースになってなかったってだけだ・・・」
「・・・お兄ちゃん?」
そう語る顔は、どこか無理をしている風に見えた。
前にも、こんな表情を見たことがある気がしたけど・・・・
「そんで、諜報部?軒猿の正体は、わかったか?」
「伊織様と言え、初代総長殿?時間の問題だ。」
「今は、まだわかってないか・・・」
「『しぼりこむ』さじ加減が難しいだけだ。」
「今回はイオリンだけじゃなくて、れーちゃん使いましょうよ。」
「わははははは!一発でわかるよな~!!」
「・・・そーだな。」
仲間の声に、こちらもいつもとは違う雰囲気で答える烈司さん。
「あの・・・大丈夫ですか、烈司さん?」
「心配いらないよ、凛たん。可愛い4代目の頼みなら、烈司さんはどんなことでも頑張れちゃうから。」
「そうじゃないです!その・・・体に負担がかかるなら、無理しないでほしいんです・・・!」
「!?・・・・だいじょーぶ♪」
その言葉に合わせ、頭に手を置かれる。
「俺の心配はいいから、自分のことだけ考えてろ。瑞希も・・・あんまり考えるなよ?」
そう言って反対の手が、瑞希お兄ちゃんの頭をなでる。
(あ・・・・)
「・・・そーかよ・・・」
烈司さんの動作を受けてうつむき、視線を逸らすお姿が可愛い!!
(わーわー!こういう反応初めて見たかも新鮮!可愛い!キュート!プリティだけど~~~♪)
でも、なぜだろう。
(・・・・・・・悲しそうにも見えるのは・・・・・?)
「瑞希お兄ちゃん、どうし・・・・!」
「わはははは!とりあえず、飯にしようぜ!」
「そうね~安心したらお腹すいちゃった~」
「うはははは!どんなご飯が出っかな~♪」
「コメはもちろん、食材もすべて国産品を使用した安全な食事だ。」
「味も抜群だぜ?」
「最高でんなぁ~♪」
(あ・・・・)
私の声が外野にかき消される。
「行こう、凛。腹減ってるだろう?」
「う、うん・・・」
なによりも、聞こうとした本人からそう言われたこともあって、質問をあきらめて部屋を出る。
女将さんが用意してくれた特別室での朝食。
(気のせいだったかな・・・?)
その時の私は、そう思ってしまった
だから思いもしなかった。
この時、瑞希お兄ちゃんに聞かなかったことを、のちに後悔することになるなんて。