彼は高嶺のヤンキー様4(元ヤン)
「念のため、レントゲンも撮らせてもらったよ。ずいぶん高いところから落ちたのに、ヒビが入ってなかったのは・・・よほど受け身がよかったのか、あるいは『厚着』をしていたおかげなのか。」
「・・・・!?」
その言葉で、急いで胸をまさぐる。
(違う!!)
アンダーシャツは着ているが、胸にまかれているサラシは違っていた。
(私が使ってる物とは違う・・・・!?)
「さらし、生地の目があらかったから、やわらかいのを巻きなおしておいたよ。蓮君。」
「見たんですか!!?」
淡々としゃべる先生に問いただす。
「俺の・・・体を見たのか!?」
「見た。」
即答され、目の前が真っ暗になる。
「あまり胸を抑えるのはやめた方が良い。形が崩れるからね。」
ムネヲ、オサエルノハ、ヤメタホウガイイ。
「なによりも、気管を圧迫する恐れが―――――」
「黙れっ!!」
「凛!!」
反射的に、老人に飛びかかっていた。
「あかん!凛!」
「放せ、ヤマト!!」
それを後ろから、羽交い絞めにして止めるヤマト。
「何で邪魔する!?こいつ、このジジイは俺の体を見た!!俺の、僕の、私のこと―――――――――」
「うん。」
私を見ながらうなずくと、はずした医療用手袋をゴミ箱に捨てながら医者は言った。
「見たよ。患者の体を知ることは医者の義務だ。」
それで泣きたくなった。
この人に知られたということは―――――――
「言わないで!!」
瑞希お兄ちゃんに知られるということ。
「言わないでください、シゲ先生!!」
「『言わないで』、とは?」
「僕は、僕は!私は―――――――・・・・あの人に嫌われたくない!彼に、瑞希お兄ちゃんに見捨てられたら、もう場所がない!!」
「凛!せやからな~」
「瑞希お兄ちゃんをだましてるのは、悪いってわかってます!治療費も・・・即金は無理ですが、毎月分割でお支払いして返済します!だから――――――――まだ・・・・!」
言わないで。
「自分の口から言うまで、好きな人に、瑞希お兄ちゃんに、『本当の凛』のことを言わないでください!!」
悲痛な気持ちで訴える。
頭のどこかでは、わかっていた。
ケンカをすれば怪我をする。
刃物を持ちだしてくる奴らばかり相手にしてきて、今まで無傷だった方が、医者に診せるようなけがにならなかった方がおかしい。
(私がしてることはおかしい。)
わかっている。
わかっているけど―――――