彼は高嶺のヤンキー様4(元ヤン)
(まさか・・・・・!?追い払ってくれた!?)
ゲシゲシ!!
海底の手に、数発蹴りを入れているのがぼんやりと見えた。
それで、私を連れて行こうとした手は泥と一緒に見えなくなる。
(助けてくれた・・・・・!?)
グイッ!
そう思ったら、背後から抱き寄せられる。
濁った海水で見えないけど、そのまま引き寄せられた。
同時に、両手の主と、私を守ってくれた足が同じ人のものだとわかる。
(に、人間なの・・・・!?)
生きてる人?
そう疑問に思った時、口に何かが当たる。
「うぐ!?かは!?」
新鮮な空気が口に、肺に入る。
「ゴホゴホ!!はあー!はあー!はあー・・・」
その空気を逃さまいと深呼吸する。
顔を見たかったけど、暴れた衝撃でゴーグルに水が入ってうまく見えない。
でも、脈打つ鼓動と、温かさから、生者であるとわかった。。
そんな誰ともわからない人が、私の体を支える。
その人が、酸素ボンベを私の口に含ませてくれていたのだ。
(呼吸が、楽になる・・・・)
ぼんやりする意識の中、体が浮上する。
手首まで沈んでいた身体が、肘まで海面に出る。
同時に、女の子を掲げていた両手が軽くなる。
(あ・・・・・?)
それで力の抜けた私の両手が、体が海の中に沈む。
海底に沈んでいくかと思えたけど・・・・
ガシッ!!
(ああ・・・・)
グッと強く抱かれる。
そして何者かによって、お姫様抱っこの状態で海面へと導かれる。
体が浮上する。
海面から顔を出せば、酸素ボンベが口から外された。
続けざま、大声の会話が聞こえてきた。
「女の子は無事だ!」
「早く蘇生措置を!」
「もう大丈夫だぞ!!」
自力で呼吸できるようになった私の耳に、そんな声が響き渡る。
安堵と、緊迫感が渦巻く現場。
(助かったの、私・・・・・?)
「無茶するなよ。」
耳元でささやかれる。
優しくも、呆れる声で言われる。
その口調と、優しい抱かれ方に覚えがあった。
(瑞希お兄ちゃん・・・・?)
彼しかいない。
私を追って追いかけてきてくれたんだね?
海のお化けから守ってくれたんだね?
しかも、海中でお姫様抱っこなんて、なんて、ロマンチックで、ご褒美を下さるなんて・・・・♪
「おい、そっちの少年は大丈夫か!?」
「早くこっちの船へ――――――!」
そんなやり取りが聞こえた気がした。
それを最後に、私は気を失った。