彼は高嶺のヤンキー様4(元ヤン)
「関山さんは、盗んでないと思う。」
「え?」
「関山さんはきっと・・・私が席に忘れたヘアピンを、預かって行ってくれたんだと思う。」
「涼子ちゃん。」
「ほら、メモだって入ってます。」
「あ。『忘れていたので、お届けします』・・・・って。」
「ねえ?やっぱり良い人なのよ。」
「そうですね・・・。」
言えない・・・
笑顔で言う涼子ちゃんを裏切りたくないので言えない。
(つなぐの方が私達より先に店を出たのに、後から脱出した涼子ちゃんのヘアピンを『忘れていたよ~』と言って返すのはおかしい・・・)
むしろ、窓を破って逃げる時に、涼子ちゃんの持ち物だとわかった上で、奪って行ったと考えた方が正しいが・・・・
「よかった~もうあきらめてたんですよ~」
喜ぶ彼女を見ると、真実が言えない。
(・・・・・・・・これも、ついていいウソですよね?)
〔★OK★〕
「そういえば、ヘアピン・・・・・・今日もつけてきてくれたんだね?」
「う、うん。変かな?」
私の問いに、髪の毛を気にしながら聞いてくる涼子ちゃん。
「そんなことないよ。」
照れる彼女を微笑ましく思いながら、切り分けたパンケーキを口に運ぶ。
「僕の趣味で選んだから、涼子ちゃん、無理してつけてないか気になってね。」
「趣・・・・!?無理してないよ!気に入ってる!」
「それならよかった。」
赤い顔で言う彼女に、涼子ちゃんの座っている席はクーラーの風が来ないのかと思った時だった。
ピヨヨン、ピー!
「あ、メール。」
すぐさまチェックする。
(瑞希お兄ちゃんからだ。)
―準備が出来そうだから、帰って来い―
短い一文だったけど、それで心が軽くなる。
幸せになれた。