赤ずきんの秘密の感情
それを渋々受け取るおばあちゃん。
そしてベッドの脇の棚に摘んだ花をそっと置く。
よし、任務は完了した。
帰ろう。
「あの子と協力して、赤ずきん……自分を変える時だ」
うん。帰る、帰るよ。
大丈夫、今すぐ帰るから。
毛布をかけ直してあげて、ゆっくりと立ち上がる。
帽子をまた被り直しておばあちゃんの方を向く。
「……じゃあね」
「また明日」
……明日なんて、そんな。
こんなに元気なのにお見舞いなんていらないでしょ。
ペコリとお辞儀をして、おばあちゃんの部屋から出る。
リビングへ行くと、窓際に置かれた植木に水をやる弦がいた。
ふっと黙って出ていこうとする前に、私に気づいた弦が駆け寄ってきた。
「もう帰るの?」
「……用事済ませたから」
「そっ……か。また顔見せに来てあげてよ」
「……あなたがいれば別に大丈夫でしょ」
私が来たってつまらないだろうし。
会話だって長くは続けられない。
そんなのよりも明るいこの人の方がおばあちゃんのこと元気にできる。