赤ずきんの秘密の感情


弦の手にはもう私の無くてはならない帽子があった。


フサっと赤毛が露になる。


両手で頭を覆いその場にしゃがみ込む。


やめて、見ないで。


震える肩を隠そうにも隠せない。


落ち着け、どうにかしなきゃ。


真っ白になる頭の中でふわっと何かが私を包み込む。



「ごめん……ごめん。ごめん、紅」



耳元で聞こえる弦の声。


その声に少し心にゆとりができる。



「帽子っ返して」



被せられた帽子の感覚にようやく心が落ち着いた。


でもなぜか弦が私を抱きしめたこの状況は変わらないまま。



「……弦、離して」


「……」



なぜか離れてくれない弦を無理やり引き剥がす。


何故か弦の顔は真っ赤っか。


どうしたんだろう。


様子がおかしい。


でも私には関係ないから。


スッと立ち上がって扉を開ける。


でもまたしても手首を掴まれて動きを封じられる。


……何がしたいんだろう。



「……何」


「俺……自分のことコントロールできないんだ」


「……そう」


「気づいたら人格が変わってて……特にこういう感情芽生えたら絶対止められないって分かってた。というかそう教えこまれてきたのが、正解だって初めて分かったんだけどさ」



確かにさっきの弦はどこかおかしかった。


それが原因だったのね。


別にそれがどうこうと私に直結して関係することじゃない。


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