赤ずきんの秘密の感情
私の気持ちが伝わったのか、そっと掴まれた手首が自由になる。
もう一度荷物を担ぎ直す。
行かなきゃ……
「ねえ、君ここら辺に住んでる子じゃないよね?」
「……え。あ、はい。今日祖母のお見舞いに来たんです」
「あ!そうなんだ。通りで見ない顔だと思った」
弾んだ声が妙に近いような気がする。
俯いたまま、どうしたものかと考える。
……人と関わるのが苦手なのに。
バレないように小さくため息をつくけど、男の子には分かるわけもなくて。
「あ、そうだ。ここらの近くに綺麗な花咲かせてる花畑あるんだよ。俺そこに知り合いいるし、少し貰ってく?きっとおばあちゃんも喜ぶんじゃないかな」
「……でも」
「いいから、いいから。ぶつかっちゃったお詫び。来て」
そう言われてまた手首をぐいっと掴まれる。
え……と小さく声が漏れた時には男の子に引っ張られる形で歩いていた。
仕方ない。
ここはなるがままに動こう。
慣れた道から外れてどんどん知らない細い道へと進んで行く。
知らない人には付いて行ってはダメと幼い頃言われたはずなのに。
でもまあ、悪い人じゃなさそうだし。
これで向こうの気が済むならそれでいい……か。