赤ずきんの秘密の感情
少し歩いて行くと道が急に拓けた。
ふわりと香る花の香りに俯いていた顔を上げた。
一面色取り取りの花が私を出迎えていた。
久しぶりに心が穏やかになっているのが分かる。
表情には出せないけど、それでも心が弾んでいる。
「綺麗な場所でしょ」
「……まあ」
「好きなの取ってていいよ。俺話つけてくるからさ」
そう言うと男の子は道の奥へと進んで行ってしまった。
誰もいなくなった場所で一人、ゆっくりと花の前にしゃがみ込む。
……どれにしようかな。
どの花も綺麗に咲き誇り、手を伸ばすのを少し躊躇ってしまう。
ここに咲く花をおばあちゃんに見せられたらいいのに。
そっと目の前で咲く一輪の黄色い花に手を伸ばす。
なんて花なのかな。
よく分からないけど、この花に何か元気が出てくるようなそんな力を感じた。
プチンとその一輪の花だけ摘み取ると、そっと立ち上がる。
あの男の子は……
「おーーい!!」
遠くで私に向かって手を振る男の子の姿。
ペコッとお辞儀してまた帽子を深く被る。
もう用事が済んだことだし、おばあちゃん家へ……
なんとなくで歩いて行けばおばあちゃん家には行けそうだし。
元きた道を進もうと足を踏み出す。
「待って!」
すぐ後ろで男の子の声がする。
でも私は振り返らない。
もう……あまり顔を見られたくない。