赤ずきんの秘密の感情


どうして私のおばあちゃんの家に、おばあちゃんをベッドに運んで寝かせているの。


訳が分からない。


“さようなら”なんて言ったのにどんな顔で会えばいいの。


ぎゅっと帽子で顔を隠して落とした鞄を拾う。


くるりと向きを変えて、リビングへと向かう。


階段を一段、また一段と降りているとパタパタと廊下を走ってくる音。


そしてその音は私よりも先に階段を降りきった。



「また会えたな!」



そう元気に言われて、階段の途中で足を止める。


……何回私足を止めなきゃいけないのよ。


そろそろ自由に足を動かせて、行動させて。



「……なんでここにいるの」



そう静かに聞くと、軽やかに階段を数段登ってきた男の子。



「俺、弦(ゲン)」


「……え?」


「親の都合でここに居候させてもらってるんだ。君は?」


「…………紅」



唐突な自己紹介に少し戸惑う。


友達なんていないからこの行為は少し怖い。


というか居候って……なんでだろう。


まあ、いいや。


おばあちゃん一人じゃないなら心強いだろうし。


ぐいっと持ってきた鞄を突き出す。



「えっと?これ、何?」


「……お母さんが私に持たせた……多分お見舞いの品」



中身まで確認したわけじゃないから、何が入ってるか分かんないけど。





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