【完】『藤の日の記憶』
高速を使わずに運転してきたので思わぬ時間は食ったが、昼前には宇治橋の側の駐車場に停めることが出来た。
「カナやん、お腹すいたね」
初めて長瀬由美子が口を開いた。
「泉くん、このあたりにレストランないの?」
「…確か橋の手前に、和食のレストランならあるはずやけど」
一誠は口を開いた。
「…このあたり知ってるの?」
「前にドライブ好きな親戚に連れてきてもらったことがある」
それは事実で、よく温泉や釣りに連れていってもらったこともある。
少し歩くと、瓦葺の平屋の食堂があった。
「確かここやなかったかなぁ」
空いていたのを見て、一誠が先に中へ入った。
「四人なんですけど大丈夫でっか?」
「ご案内します」
奥から声がしたので、
「良かった、すいてるってさ」
つられて続々と入った。