【完】『藤の日の記憶』
でも、と一誠は、
「男ってだいたい泉みたいに、なんでもガツガツするんやないかなぁ」
「そう?」
由美子が一誠の目を見た。
「まぁうちはどこか醒めて見てるらしくて、あんまりガツガツせんけど、それはあくまでも稀なケースやからねえ」
そこへ泉が戻ってきた。
「注文は?」
「あとお前だけや」
「いやー、実はちょっとデカいの出てなー」
「お前、デリカシーないな」
一誠が苦笑い気味にチクリと言う。
「だいたい男子って、食事でもそういう話するよね」
「うち、オトンがそうやったからな」
「あのギャンブラーのオトンか」
「あぁ」
そこへ二人前の天ぷら定食が運ばれてきた。
一誠がそれぞれリレーする。
「ありがとう」
由美子が笑顔で返した。