契約婚で嫁いだら、愛され妻になりました
同時刻。鈴音は休憩に入るところだった。
従業員用通路に入ってすぐに、携帯を手にする。
(あ、メール……)
忍から、【今夜は遅くなる。食事もいらない】と一行のメールを受け、鈴音はほっとしたような寂しいような複雑な心境になった。
携帯を持つ左手を返し、薬指に目を落とす。
昨日、忍からもらったマリッジリング。
それをじっくり見たのは今朝のことで、改めて分不相応だと肩を竦めた。
小粒のダイヤモンドが途切れることなく並んでいる、エタニティリング。
ゴージャスだけれど、派手に見えないのは華奢なラインのおかげだろう。
夫婦を演じるためだけにしては高価そうな指輪に、鈴音は嘆息を漏らす。
そうして、ふと疑問が浮かんだ。
(そういえば、サイズがぴったりだったけれどどうしてだろう。それと、忍さんも指輪をつけているのかな? 昨日はそこまで確認する余裕なかった)
立ち止まって指輪を見つめる。そこに、ほかの店の従業員が通りかかって、咄嗟に左手を隠した。
すれ違う男性従業員を横目に見て、不意に佐々原を思い出す。
昨日の今日で気まずいのは確かだけれど、現実的に避けられない。
平常心を心がけて出社したものの、佐々原は午前中に支店長と打ち合わせのため、売り場には顔を見せなかった。
そして梨々花も休みなのだが、彼女からは昨夜メールがきていた。
内容は、佐々原に知られてしまったことへの謝罪と、近々ゆっくり食事でもして話をしたいということだった。
(忍さんも遅いみたいだし、今日が都合いいかな?)
「山崎さん」
従業員用通路に入ってすぐに、携帯を手にする。
(あ、メール……)
忍から、【今夜は遅くなる。食事もいらない】と一行のメールを受け、鈴音はほっとしたような寂しいような複雑な心境になった。
携帯を持つ左手を返し、薬指に目を落とす。
昨日、忍からもらったマリッジリング。
それをじっくり見たのは今朝のことで、改めて分不相応だと肩を竦めた。
小粒のダイヤモンドが途切れることなく並んでいる、エタニティリング。
ゴージャスだけれど、派手に見えないのは華奢なラインのおかげだろう。
夫婦を演じるためだけにしては高価そうな指輪に、鈴音は嘆息を漏らす。
そうして、ふと疑問が浮かんだ。
(そういえば、サイズがぴったりだったけれどどうしてだろう。それと、忍さんも指輪をつけているのかな? 昨日はそこまで確認する余裕なかった)
立ち止まって指輪を見つめる。そこに、ほかの店の従業員が通りかかって、咄嗟に左手を隠した。
すれ違う男性従業員を横目に見て、不意に佐々原を思い出す。
昨日の今日で気まずいのは確かだけれど、現実的に避けられない。
平常心を心がけて出社したものの、佐々原は午前中に支店長と打ち合わせのため、売り場には顔を見せなかった。
そして梨々花も休みなのだが、彼女からは昨夜メールがきていた。
内容は、佐々原に知られてしまったことへの謝罪と、近々ゆっくり食事でもして話をしたいということだった。
(忍さんも遅いみたいだし、今日が都合いいかな?)
「山崎さん」