契約婚で嫁いだら、愛され妻になりました
(あの人、やっぱり西城戸星羅さんだ。ということは、さっきの車はやっぱり忍さんの……)
心臓が嫌な音を立てる。
星羅が近づいてくるにつれ、色々な感情が入り乱れる。
こんなふうに取り乱す必要なんかないはずだった。
別に、忍がどんな行動を取ろうと、誰とどんな関係であろうと、それは口出しすることではないし、干渉することでもない。
頭ではわかっている。だけど、心が暴走し、混沌としていくのを止められない。
『なぜ』と脳内で繰り返し、冷え切った指先を握り締める。
もしも今、彼女に存在を気づかれ、話しかけられたとしたらうまく対応できるだろうか。
鈴音は不安な気持ちでどうにか立っていると、急に星羅が足を止めた。それに気づいて視線を上へ滑らせていく。
星羅は突然、携帯を耳に当て、近くの建物の下へと移動した。
鈴音はひとまずホッとし、ちょうど信号が青に変わったのを見てとりあえずその場から離れようとする。そのときだった。
「こんばんは、星羅さん」
今度は聞き覚えのある声に足止めされ、ついまた振り返ってしまう。
鈴音の瞳に星羅と同時に映し出されたのは……。
「ふふ。こんばんは。柳多さん」
星羅がにっこり笑顔で挨拶をしたのは、紛れもなく柳多だった。
鈴音は横断歩道を渡ることも忘れ、目を剥いて固まる。
この数分でわからないことが多すぎる。
呆然としていると、ふたりは鈴音に気づくことなく人混みに紛れて消えて行ってしまった。
心臓が嫌な音を立てる。
星羅が近づいてくるにつれ、色々な感情が入り乱れる。
こんなふうに取り乱す必要なんかないはずだった。
別に、忍がどんな行動を取ろうと、誰とどんな関係であろうと、それは口出しすることではないし、干渉することでもない。
頭ではわかっている。だけど、心が暴走し、混沌としていくのを止められない。
『なぜ』と脳内で繰り返し、冷え切った指先を握り締める。
もしも今、彼女に存在を気づかれ、話しかけられたとしたらうまく対応できるだろうか。
鈴音は不安な気持ちでどうにか立っていると、急に星羅が足を止めた。それに気づいて視線を上へ滑らせていく。
星羅は突然、携帯を耳に当て、近くの建物の下へと移動した。
鈴音はひとまずホッとし、ちょうど信号が青に変わったのを見てとりあえずその場から離れようとする。そのときだった。
「こんばんは、星羅さん」
今度は聞き覚えのある声に足止めされ、ついまた振り返ってしまう。
鈴音の瞳に星羅と同時に映し出されたのは……。
「ふふ。こんばんは。柳多さん」
星羅がにっこり笑顔で挨拶をしたのは、紛れもなく柳多だった。
鈴音は横断歩道を渡ることも忘れ、目を剥いて固まる。
この数分でわからないことが多すぎる。
呆然としていると、ふたりは鈴音に気づくことなく人混みに紛れて消えて行ってしまった。