契約婚で嫁いだら、愛され妻になりました
いつも気さくに挨拶をしてくれる鈴音のことを、コンシェルジュはすぐ覚えた。
「妻が出た……? どのくらい前に!」
忍が血相を変え、コンシェルジュに詰め寄ると、彼は目を瞬かせながら返す。
「えっ。本当に、つい先ほどで……五分くらい前かと」
考えるよりも先に身体が動き、マンションの外に出る。だが、鈴音の姿は見当たらない。
どこへでも構わないから、今すぐ走り出したい。その先に鈴音がいると信じて。
なんの保証もないことは無駄だという忍が、そんな衝動に駆られる。
どうにか理性を保ち、グッと堪え、一度部屋に戻る選択をした。
「もういらっしゃいませんでしたか……」
コンシェルジュが肩を落とし、声をかける。
「ああ。でも、教えてくれてありがとう」
「あの、でも私、奥様からキーを預かっていますので、ご心配はないかと」
そう言って笑顔でキーを忍に差し出す。コンシェルジュは、忍がキーを忘れてしまって焦っているのだと思い込んでいた。
しかし、忍はキーを持っている。
預けられたキーの意味を悟り、コンシェルジュから受け取ると悶々としてエレベーターに乗った。
「妻が出た……? どのくらい前に!」
忍が血相を変え、コンシェルジュに詰め寄ると、彼は目を瞬かせながら返す。
「えっ。本当に、つい先ほどで……五分くらい前かと」
考えるよりも先に身体が動き、マンションの外に出る。だが、鈴音の姿は見当たらない。
どこへでも構わないから、今すぐ走り出したい。その先に鈴音がいると信じて。
なんの保証もないことは無駄だという忍が、そんな衝動に駆られる。
どうにか理性を保ち、グッと堪え、一度部屋に戻る選択をした。
「もういらっしゃいませんでしたか……」
コンシェルジュが肩を落とし、声をかける。
「ああ。でも、教えてくれてありがとう」
「あの、でも私、奥様からキーを預かっていますので、ご心配はないかと」
そう言って笑顔でキーを忍に差し出す。コンシェルジュは、忍がキーを忘れてしまって焦っているのだと思い込んでいた。
しかし、忍はキーを持っている。
預けられたキーの意味を悟り、コンシェルジュから受け取ると悶々としてエレベーターに乗った。