契約婚で嫁いだら、愛され妻になりました
(それはそれでいい。昨夜が特別だっただけで、あとはお互い干渉しないでいれば、きっと生活が大きく変わることもない)
忍の冷やかな言葉を待っていると、不意に忍が顔を上げた。
「鈴音は?」
「はい?」
「鈴音はもう食べたのか?」
「あ、いえ……これからですけど」
もっと、短くハッキリと拒否されるものだと思い込んでいた。そのせいで、拍子抜けした間抜けな声になってしまう。
忍は、動転している鈴音を見上げて言った。
「じゃあ、一緒に」
そして、さらに想像もしない返しに鈴音は驚倒する。
瞬きもせず、言葉を失った鈴音を見て、忍は僅かに首を傾げた。
「なんだ?」
「……てっきり、断られるとばかり」
ついうっかり、本音を漏らしてしまった。
しかし、忍は怒ることもなく、淡々として答える。
「自分では面倒だから用意しない。でも、鈴音が作ってくれるならもらう」
そう言って立ち上がり、今度は忍が鈴音を見下ろした。
鈴音はどうにか忍の視線から逃れ、キッチンへ戻って食事の用意をし始める。対面キッチンからは、ダイニングテーブルに着き、引き続きタブレットを見ている忍の横顔が見れる。
鈴音は端整な横顔を盗み見、すぐに顔を戻した。
(もっと、息がつまるような空気になるかと思っていたのに)
けれど、忍は鈴音の朝食を受け入れ、一緒に食事をすると言う。食事中もひとこと、ふたことくらいは言葉を交わすような雰囲気さえする。
ほんの少しの緊張感を抱きながら、向かい合って食事をする。
それは、まるで本当に共に暮らし始めたばかりの新婚のようにすら思えた。
忍の冷やかな言葉を待っていると、不意に忍が顔を上げた。
「鈴音は?」
「はい?」
「鈴音はもう食べたのか?」
「あ、いえ……これからですけど」
もっと、短くハッキリと拒否されるものだと思い込んでいた。そのせいで、拍子抜けした間抜けな声になってしまう。
忍は、動転している鈴音を見上げて言った。
「じゃあ、一緒に」
そして、さらに想像もしない返しに鈴音は驚倒する。
瞬きもせず、言葉を失った鈴音を見て、忍は僅かに首を傾げた。
「なんだ?」
「……てっきり、断られるとばかり」
ついうっかり、本音を漏らしてしまった。
しかし、忍は怒ることもなく、淡々として答える。
「自分では面倒だから用意しない。でも、鈴音が作ってくれるならもらう」
そう言って立ち上がり、今度は忍が鈴音を見下ろした。
鈴音はどうにか忍の視線から逃れ、キッチンへ戻って食事の用意をし始める。対面キッチンからは、ダイニングテーブルに着き、引き続きタブレットを見ている忍の横顔が見れる。
鈴音は端整な横顔を盗み見、すぐに顔を戻した。
(もっと、息がつまるような空気になるかと思っていたのに)
けれど、忍は鈴音の朝食を受け入れ、一緒に食事をすると言う。食事中もひとこと、ふたことくらいは言葉を交わすような雰囲気さえする。
ほんの少しの緊張感を抱きながら、向かい合って食事をする。
それは、まるで本当に共に暮らし始めたばかりの新婚のようにすら思えた。