Fragrance
「……」
「……」
沈黙が2人の間に流れる。
純也が静かにまた顔を近づけて来るのを避けようとすると、頭をしっかりとつかまれる。
そしてゴツンと鈍い音がした瞬間、頭突きをされたのだと分かった。
「バーカ」
「え?」
「本当真面目っつーかなんつーか」
「は?」
「どうせ、このままやっちゃったら純也とは友達にも戻れなくなる!とか、彼氏のことを裏切りたい訳じゃないとか今更考えてんだろ」
「うっ……」
図星過ぎて、何も言い返せない。
「最初から最後までやるつもりなんかねーよ」
意地悪そうに笑う純也に「ええ?」と混乱した表情を浮かべる圭。
「まあ、でもキスは悪くなかったかな」
「純也……まさか」
からかったの?
そう言葉を吐きだそうとした瞬間スマートフォンにメッセージが表示される。
彼氏からのメッセージだった。
「連絡遅くなってごめんね。週末東京に戻るから一緒に過ごせる?圭に会いたい。」
そう書いてあった。
「彼氏から?よかったじゃん。連絡来て。男って本能で奪われると思うと察知するからなー」
そう言いながら純也は立ち上がり、出口の方へ歩いていく。
「え?純也どこ行くの?」
「トイレだよ。察しろ」
「あ、はい……」
純也の身体の事情に気が付いたものの、どうにか出来るわけはないので圭は気が付かなかったことにして彼からのメッセージをもう一度読み直した。