清廉の聖女と革命の鐘
1章・始まりの鐘
序章
幼いクリスティーナは、大好きな母の膝の上でうとうとと眠気に襲われていた。
眼下では、王都イディスから聞こえる賑やかで活気に満ちた市場が見える。
エルカイダ城のバルコニーは王都全体がよく見渡せるため、母が好んでよく足を運ぶのだ。もちろん、クリスティーナも。
アデス大陸から南に約数百キロ。孤島に存在する神秘の国、エルカイダ。
この世に降臨した女神、フェリテシアの守護を受けるこの国は、代々、王族の女性がつとめる聖女と選ばれた国王が治める絶対王制として栄華を極めてきた。
この国は年中温暖で雨は少量しか降らない。曇りの日も年で数える程度だ。
しかし、水も作物も豊富で、飢餓なんてまず起こるはずもない豊かすぎる国だった。
もちろん、そのことに対して誰一人として疑問を持つ者はいなかった。
_だってここは、フェリテシア神と聖女であるお母様が守護する国だもの
「お母様、今日はお仕事忙しくないんですか?」
クリスティーナが顔を上げて母を見上げる。ふわりと、の頭を優しく撫でられる。
「