清廉の聖女と革命の鐘
「神様なんて、私は信じない…」
冷ややかな声が耳に届き、その冷たさに自らはっとする。慌ててあたりを見回したクリスティーナは、まだ侍女たちが来ていないことに胸をなでおろした。
ほかならぬ自分がこんなことを言えば、問題になるのは目に見えている。
その時、コンコンと扉をノックする音が聞こえ、次いで「聖女様、入ってもよろしいでしょうか」という声が聞こえた。
クリスティーナは居住まいを正し、「どうぞ」と短く応じる。
ぞろぞろと部屋に入る侍女たちを無感動な目で見つめ、彼女は身動き一つとらないでベッドのふちに座っていた。
ふと思い出すのは、巫女が日々言葉を尽くして説いてくるあの言葉。
『聖女様のお身体も、人生も、聖女様ご本人のものではありません。この世に生をうけたのは、世界の人々に尽くすため。幸せとは、恵みを受けたものだけが感じること、そうお考えください。決して、個人の幸せを享受したいなどと、思い違いをなさらぬように』毎日のように聞かされているため、すっかり諳んじている。
そして、8年前に島に奇跡的に流れ着いた少年の言葉も鮮明に覚えていた。
『運命なんて誰が決めたんだ?諦める言い訳を、運命っていう言葉にして逃げるなんて
“卑怯だ”_』