清廉の聖女と革命の鐘
「ギルバート。国王に剣を向けるなんて、それでも聖騎士ですか」
さっと、強張った顔を隠すように無表情で
ギルバートに視線を向ける。
「半年ぶりだなぁ、姫。背ぇ伸びたんじゃねぇの?」
「さあ。縮みはしませんでしたけど」
素っ気なくクリスティーナは答える。
「そりゃそうだ」
豪快に笑う彼に、父親の眉のしわがさらによったのを、クリスティーナは見逃さなかった。
早くこの場をおさめないと…。
「ギルバート。お父様から剣を引きなさい。早く」
命じても、ギルバートは顔色一つ変えず、剣も下げない。
「俺の主君はあなたのお母様ただ一人。ジゼル様だけだ。決して姫でもねぇし、夫でありながらジゼル様をないがしろにして、死に追いつめた、この性悪爺でもない」
憤怒に表情を変えた父親が怒鳴り出す前に、クリスティーナは命じる相手を変えた。
「ブルーノ」
剣戟が響き、一閃で剣を下から弾かれたギルバートが飛びずさる。後退させられているのにもかかわらず、ギルバートは愉快そうに笑って、余裕を見せた。