清廉の聖女と革命の鐘

もちろん詠唱は続けたまま。だが、息は決して乱れない。厳しい鍛錬を積み重ねた結果だった。

徐々に、周りに無数の光の点が浮かび上がる。長い聖衣を翻して舞う姿は淡い光に彩られ、誰もが息を呑むほど神秘的だ。

ちらちらと不規則に光を返す装飾品や、クリスティーナの艶めく横顔が、なおのことこの世のものとは思えぬ風景を作り上げていた。

半刻もすると、巨大な光晶石全体が虹色に輝き渡った。やがて光は収束し、一つの筋となってまっすぐ上に放たれていく。

祭壇の向こうで聖務を見守る神官や巫女たちが振り仰げば、巨大な光晶石に吸い込まれた光が四方へ散り広がる光景が見えるはずだ。

生み出されたフェリテシア神の力が、各地の光晶石へと送られたのだ。これによって人々の生活を満たし、心の平穏を保つことができる。

それがすむと、原石の虹色の光りは徐々に薄れて消えていった。

工程は全部で一刻ほど。
がくっ、終わった瞬間、クリスティーナは急激に体の力が抜けその場に倒れ込んだ。巫女たちが素早く彼女の元に行き、ぐったりと疲労する体を支えた。

舞は気力と体力を極端に奪う。初めて聖務を行った時は気絶してしまったほどだ。
これが、力の代償。

クリスティーナはふらついた足取りで巫女たちに支えられながら、祭室から降りる。

階段を降りきると、すっと黒い陰が前をふさいだ。

「聖女様は私が」
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